



体外受精に進むなかで、顕微授精(ICSI)を提案されたとき、「本当に必要なの?」「体外受精とはどう違うの?」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
顕微授精は、体外受精の一種として広く行われている治療ですが、すべての方に必要なわけではなく、適応となる背景には明確な医学的根拠があります。
今回は、顕微授精が選ばれる主な理由や、どのようなケースで選択されるのかについて、保険診療との関係も含めて詳しくご紹介します。
顕微授精は、「体外受精の次の段階」という位置づけではなく、受精の成立が難しいと考えられる状況に対して選択される治療法です。
体外受精では、卵子と精子を同じ培養環境に置き、精子が自力で卵子に侵入する必要があります。そのため、精子の数や運動率、卵子との相互作用に問題がある場合、受精が起こらないことがあります。
こうした背景から、受精のプロセスを医療技術で補う方法として、顕微授精が検討されます。
顕微授精が選択される最も多い理由は、精子側の因子が関与している場合です。
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
・精子数が極端に少ない(乏精子症)
・精子の運動率が著しく低い(精子無力症)
・精子の形態異常が多い(奇形精子症)
・精子が卵子に到達・侵入できない可能性が高いと判断された場合
これらのケースでは、自然受精に任せる体外受精では受精率が不安定になるため、精子を選別し直接卵子に注入する顕微授精が有効と考えられます。
精液所見に大きな問題がなくても、体外受精で受精に至らないケースがあります。このような場合、受精障害が疑われます。
たとえば、
・体外受精で受精しなかった
・受精率が極端に低かった
・胚盤胞にならなかった
といった場合には、受精の段階で何らかの障害が起きている可能性があります。
このような背景から、次の治療として顕微授精が選択されることがあります。
顕微授精は、以下のような状況で検討されます。
【顕微授精(ICSI)が選択されるケース】
・精子数や運動率が著しく低い
・精子の形態異常が多い
・体外受精で受精しなかった、または受精率が低かった
・凍結精子を使用する場合
・精巣や精巣上体から採取した精子を用いる場合(TESEなど)
・抗精子抗体が関与している可能性がある場合
※当院では、初回から一律に顕微授精を行うことはなく、検査結果や治療経過をもとに、最適な方法を選択しています。
保険診療で受けられる治療は、一定の条件や年齢制限のもとで標準的な内容に限られます。一方、自費診療では、医師の判断や患者様の希望に応じて、より個別性の高い治療や先進医療を組み合わせることが可能です。
例えば、体外受精の胚移植においても、保険診療と異なり、自費診療では胚の染色体を検査して着床の可能性の低い胚移植を避けることができるPGT検査を併用するなど、柔軟な対応ができます。また、保険では受けられないオプション検査も含め、より多角的なアプローチが取れるのが特徴です。
このように、費用面の違いだけでなく、治療戦略や技術の選択肢にも差が出るため、医師とよく相談のうえで「自分に合った治療」が選べることが大切です。
ファティリティクリニック東京では、高度な医療と、心に寄り添うサポート体制の両立を目指しています。以下の3つの方針に基づき、安心して治療に取り組んでいただける環境を整えています。
① 医療の安全管理
ISO9001の認証を取得し、医療安全管理室を設置。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠のリスク回避、災害時でも培養機器が安定稼働するようなシステムを導入しています。
② 高い医療水準の維持
JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の監査合格施設として、精密な胚培養技術と専門スタッフによる治療体制を確立。単一胚移植による高い妊娠率の維持を目標に掲げています。
③ 心に寄り添う医療の実践
医師・看護師・胚培養士・心理カウンセラーが連携し、検査や治療の内容を一つひとつ丁寧にご説明します。不妊治療が「つらいもの」ではなく、「希望に向かう選択」として感じられるようサポートします。
今回は、顕微授精が選択される理由や、どのようなケースで顕微授精が勧められるのかについて解説しました。
顕微授精はすべての方に必要なわけではありませんが、適切に選択することで、受精の確率や妊娠への可能性を高められる重要な治療手段の一つです。
体外受精との違いや、保険との関係性も含めて、医師とよく相談しながら、今のご自身に合った治療方針を見つけていきましょう。