



不妊検査で「卵管が詰まっている可能性があります」と言われ、驚いたり、不安になったりする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
卵管は、卵子と精子が出会い、受精卵が子宮へ移動するための重要な通り道です。そのため、卵管が閉塞していると、自然妊娠が難しくなる場合があります。
ただし、卵管閉塞が見つかったからといって、必ずしも自然妊娠ができなくなるわけではありません。片側だけが閉塞しているのか、両側とも閉塞しているのか、また閉塞している場所や原因によっても、妊娠の可能性や適した治療方法は異なります。
今回は、卵管閉塞が妊娠に与える影響をはじめ、主な原因や検査方法、自然妊娠が難しい場合に検討される治療の選択肢について解説します。
卵管は、子宮の左右に伸びる細い管状の器官です。排卵された卵子を取り込み、精子と出会う場所となるほか、受精卵を子宮へ運ぶ役割も担っています。
自然妊娠では、一般的に卵管内で受精が起こり、その後、受精卵が細胞分裂を繰り返しながら子宮へ移動して着床します。
この卵管の通り道が何らかの原因で塞がれている状態を「卵管閉塞」といいます。
卵管が閉塞すると、精子が卵子のいる場所まで到達できなかったり、受精卵が子宮へ移動できなくなったりするため、妊娠の成立に大きく影響します。
卵管閉塞は、閉塞している場所によって大きく二つに分けられます。
卵管近位部閉塞
子宮に近い卵管の入口付近が塞がれている状態です。検査時の卵管の一時的なけいれんなどによって、閉塞しているように見えることもあります。
卵管遠位部閉塞
卵巣に近い卵管の先端側が塞がれている状態です。炎症や癒着などが関係している場合があり、卵管内に液体がたまる「卵管留水腫」を伴うこともあります。
卵管閉塞と診断された場合には、単に通っているかどうかだけでなく、閉塞部位や卵管の状態まで確認することが治療方針を考えるうえで重要になります。
卵管閉塞の原因として挙げられるのが、卵管やその周囲に生じた炎症、癒着などです。
例えば、クラミジア感染症などによる骨盤内炎症性疾患では、卵管に炎症が起こり、治癒する過程で癒着や閉塞が生じることがあります。
また、子宮内膜症によって卵管周囲に癒着が生じると、卵管の動きや卵子を取り込む働きが妨げられる場合があります。
過去の骨盤内手術や腹部手術による癒着が関係するケースもあります。
一方で、検査を行っても明確な原因が分からないことも珍しくありません。
卵管閉塞には自覚症状がある?
卵管閉塞そのものには、特徴的な自覚症状がほとんどありません。
月経が規則的に来ていても卵管が閉塞している場合があり、排卵が正常に起こっているからといって、卵管にも問題がないとは限らないのです。
そのため、妊娠を希望してもなかなか妊娠に至らず、不妊検査を受けたことで初めて卵管閉塞が見つかる方もいます。
なお、卵管閉塞の原因となる感染症や子宮内膜症などによって、下腹部痛や月経痛などがみられる場合はありますが、症状の有無だけでは卵管の状態を判断することはできません。
卵管の通過性を調べる代表的な方法が、子宮卵管造影検査です。
子宮内に造影剤を注入し、卵管を通って腹腔内へ流れる様子をレントゲンで確認します。
卵管の通過性だけでなく、子宮の形状や閉塞が疑われる部位などを把握するためにも役立つ検査です。
ただし、子宮卵管造影検査で造影剤が流れなかったからといって、必ずしも卵管が完全に閉塞しているとは限りません。
特に子宮に近い卵管では、検査時の一時的なけいれんや粘液などの影響によって、閉塞しているように見えることがあります。
そのため、検査結果や症状、これまでの病歴などを踏まえ、必要に応じて追加の検査を検討します。
卵管の状態を確認する方法には、超音波を用いた卵管通過性検査や、腹腔鏡による検査などもあります。ただし、すべての方にこれらの検査が必要になるわけではありません。
また、卵管閉塞が疑われる場合には、閉塞の有無だけでなく、卵管留水腫の有無や卵管周囲の癒着が疑われるかどうかも、治療方法を選ぶうえでの判断材料になります。
卵管閉塞と診断されたとき、特に気になるのが自然妊娠できるのかということではないでしょうか。
自然妊娠が可能かどうかは、卵管が片側だけ閉塞しているのか、両側とも閉塞しているのかによって大きく異なります。
片側の卵管が閉塞している場合
左右どちらか一方の卵管が通っており、排卵や精子などに大きな問題がなければ、自然妊娠できる可能性があります。
ただし、卵管が通っていることと、卵子を取り込んで受精卵を運ぶ機能が十分に保たれていることは、必ずしも同じではありません。
そのため、卵管の状態や年齢、不妊期間、ほかの検査結果などを踏まえて、自然妊娠を目指す期間を検討します。
両側の卵管が閉塞している場合
両側の卵管が完全に閉塞している場合、卵子と精子が自然に出会うことが難しくなるため、自然妊娠は極めて困難になります。
ただし、検査で両側閉塞が疑われた場合でも、実際には一時的なけいれんなどによる見かけ上の閉塞である可能性も考慮する必要があります。
まずは検査結果を適切に評価し、必要に応じて閉塞の状態を詳しく確認することが重要です。
なお、卵管に炎症や癒着などによる障害がある場合には、子宮外妊娠(異所性妊娠)のリスクが高くなることも知られています。妊娠が成立した際には、妊娠初期に着床部位を確認することも大切です。
卵管閉塞が見つかった場合の治療は、閉塞している場所や程度、卵管の状態によって異なります。
また、女性の年齢や不妊期間、精液検査の結果なども、治療方法を決める際の重要な判断材料です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、細いカテーテルを子宮から卵管内に挿入し、バルーンを使って閉塞した部分の通過性を改善する治療です。
主に子宮に近い卵管近位部の閉塞などで検討されます。
卵管の通過性が改善すれば、自然妊娠を目指せる可能性があります。ただし、閉塞部位や卵管の損傷の程度によっては適さない場合があり、治療後に再び閉塞することもあります。
FTについて詳しく知りたい方は、当院の関連記事「自然妊娠を目指すなら|不妊治療の第三の選択肢『卵管鏡下卵管形成術(FT)』とは?」もご参照ください。
体外受精(IVF)
卵管の通過性を改善することが難しい場合や、両側の卵管閉塞が確認されている場合には、体外受精が選択肢となります。
体外受精では、卵巣から採取した卵子と精子を体外で受精させ、得られた胚を子宮内へ移植します。
卵管内で卵子と精子が出会う過程を経ずに受精を行うため、卵管閉塞がある場合にも妊娠を目指すことができます。
ただし、体外受精を行えば必ず妊娠できるわけではなく、年齢や卵巣機能、胚の状態などによって治療成績は異なります。
また、卵管留水腫がある場合には、子宮内への液体の逆流などが胚移植の結果に影響することがあります。そのため、状態によっては胚移植前に卵管に対する治療を検討する場合もあります。
どの治療を選ぶべき?
例えば、片側の卵管が正常に機能していると考えられる場合には、自然妊娠やタイミング法を一定期間検討できることがあります。
一方、両側閉塞が確認されている場合や、年齢・不妊期間などを考慮して早期の妊娠を目指す必要がある場合には、体外受精を優先することもあります。
卵管閉塞の治療では、「自然妊娠を目指せるか」という視点だけでなく、「どの方法が現在の身体の状態や妊娠までの時間を考えたときに適しているか」という視点も欠かせません。
治療ごとの利点や限界を理解したうえで、医師と相談しながら方針を決めていきましょう。
ファティリティクリニック東京では、高度な医療と、心に寄り添うサポート体制の両立を目指しています。
① 医療の安全管理 ISO9001の認証を取得し、医療安全管理室を設置。FT手術や体外受精の採卵・移植プロセスのすべてにおいて、国際標準の厳格な品質管理とリスク回避の取り組みを徹底しています。
② 高い医療水準の維持 JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の監査合格施設として、専門スタッフが精密な治療体制を確立。多くの卵子が採れる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの合併症をお持ちの方であっても、将来の第2子、第3子も見据えた最適な卵巣刺激と凍結・培養計画をご提案します。
③ 心に寄り添う医療の実践 「卵管が詰まっている」と言われると、「自分の身体を責めてしまう」という不安や悲しみを抱える方はとても多いものです。当院では医師・看護師だけでなく、心理カウンセラーも在籍しており、今後のステップをどう選ぶべきかという迷いやストレスについて、いつでも相談できる環境を整えています。
今回は、卵管閉塞が妊娠に与える影響や、主な原因、検査方法、自然妊娠が難しい場合の治療の選択肢について解説しました。
卵管閉塞は、不妊の原因となることがある一方、閉塞の状態によって妊娠の可能性や適した治療方法が異なります。
片側の卵管が通っている場合には自然妊娠を目指せることもありますが、両側の卵管が完全に閉塞している場合には、卵管の通過性を改善する治療や体外受精などを検討する必要があります。
大切なのは、卵管閉塞という診断名だけで治療方法を決めるのではなく、閉塞している場所や卵管の状態、年齢、これまでの妊活・不妊治療の経過などを総合的に考えることです。
ファティリティクリニック東京では、患者さま一人ひとりの検査結果やご希望を踏まえ、妊娠に向けた治療方針を検討しています。卵管の検査結果について不安がある方や、今後の治療方法に迷われている方は、診察の際にご相談ください。