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シート法(SEET法)やスクラッチ法は本当に有効?着床障害に対する当院の考え方
院長 小田原圭2026年09月30日

 

はじめに

「良好な胚盤胞を移植したのに妊娠しなかった」「何度も胚移植を繰り返しているのに、なかなか着床しない」

このような経験から、着床を助けるための追加治療について調べ、SEET法(シート法)や子宮内膜スクラッチ法に関心を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらは、胚が着床しやすい子宮内膜の環境を整えることを目的として考案された治療法です。しかし、すべての方に効果が認められているわけではなく、現時点では有効性について慎重な判断が必要です。

また、胚移植がうまくいかない原因は、必ずしも子宮内膜だけにあるとは限りません。胚の染色体の状態や子宮内の病変、移植時のホルモン環境など、さまざまな要因を総合的に評価することが重要です。

今回は、SEET法とスクラッチ法の仕組みや科学的根拠を整理し、着床障害に対する治療をどのように考え、選択していくべきかについて解説します。


 

【目次】

・繰り返し着床しない場合、何を確認すべき?

・SEET法とは?期待される作用と有効性

・スクラッチ法とは?着床率は改善する?

・追加治療を検討する前に確認したいこと

・当院が大切にする着床障害への治療の考え方

・当院の治療方針とサポート体制

・まとめ

 

繰り返し着床しない場合、何を確認すべき?

体外受精や顕微授精で胚移植を行っても、必ず妊娠が成立するわけではありません。

良好な胚を複数回移植しても妊娠に至らない状態は、一般に「反復着床不全」と呼ばれます。ただし、その定義は一律ではなく、移植回数だけで判断するものではありません。

着床には、胚と子宮内膜の両方の状態が関係しています。

例えば、形態評価で良好と判断された胚盤胞であっても、染色体の状態まで正常であるとは限りません。また、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、慢性子宮内膜炎など、子宮側に着床を妨げる要因が存在する場合もあります。

そのため、胚移植が繰り返し不成功となった際には、まず次のような情報を整理することが重要です。

・移植した胚の発育段階やグレード

・女性の年齢とこれまでの治療経過

・子宮内腔や子宮内膜の状態

・胚移植の方法や移植時の状況

 

追加治療を検討する前に、これまでの治療結果から何が分かっているのかを確認することが、次の治療方針を考える出発点となります。

 

▶︎ 関連記事:胚移植のスケジュールと成功率を高めるポイント

 

SEET法とは?期待される作用と有効性

SEET法(Stimulation of Endometrium–Embryo Transfer)は、胚移植前に移植する胚を育てた培養液を子宮内へ注入し、着床に適した子宮内膜の環境を整えることを目的とした方法です。

通常のSEET法では、胚盤胞を培養した際の培養液を保存し、胚移植の数日前に子宮内へ注入します。

この方法は、胚から分泌される物質が子宮内膜に働きかけ、着床の準備を促すのではないかという考え方に基づいています。

 

SEET法は妊娠率を高めるのか?

SEET法については、一部の研究で妊娠率の改善を示唆する結果が報告されています。

一方、研究ごとに対象となる患者さまや実施方法が異なり、反復着床不全の方に対して妊娠率や出生率を確実に高めるという結論には至っていません。

日本の生殖医療ガイドラインに基づく解説でも、SEET法は治療の選択肢となり得る一方、明確な有効性は確立されていないとされています。

 

したがって、SEET法は「胚移植をする際に必ず併用した方がよい治療」ということではありません。

これまでの移植歴や患者さまの状態を踏まえ、期待できる効果と科学的根拠の限界について理解したうえで検討することが大切です。

 

スクラッチ法とは?着床率は改善する?

子宮内膜スクラッチ法は、細い器具などを用いて子宮内膜に意図的に小さな傷をつけ、その修復過程で生じる反応を利用して着床を促すことを目的とした方法です。

子宮内膜が修復される際には、炎症反応に関わる物質や成長因子などが働きます。

こうした反応が着床に適した環境づくりにつながるのではないかという仮説から、スクラッチ法が考案されました。

 

スクラッチ法の効果は証明されている?

これまでの研究では、妊娠率の改善を示唆する報告がある一方、効果が認められなかった研究もあります。

日本の生殖医療ガイドラインに基づく解説では、着床に対する有効性は明確ではなく、対象となる患者さまや実施時期、方法についても一定の見解が得られていないとされています。

また、スクラッチ法は子宮内膜に器具を挿入する処置であるため、痛みや出血、感染などのリスクも考慮する必要があります。

 

「着床しないから、とりあえずスクラッチ法を追加する」という考え方ではなく、処置によって期待できる利益と身体的な負担を比較し、必要性を判断することが重要です。
 

 

追加治療を検討する前に確認したいこと

SEET法やスクラッチ法を検討する際には、まず、着床しない原因として評価すべき項目が残っていないかを確認することが大切です。

特に、次のような点は治療方針を考えるうえで重要になります。

 

胚の状態を振り返る

胚盤胞のグレードは、主に形態から発育状態を評価する指標です。

見た目が良好な胚であっても染色体異常が存在する場合があるため、移植した胚の評価や女性の年齢などを含めて考える必要があります。

 

子宮内の環境を確認する

子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、慢性子宮内膜炎や子宮内腔の癒着などがある場合には、着床に影響する可能性があります。

超音波検査などの結果や症状に応じて、子宮鏡検査を含む追加評価が必要か検討します。

 

移植周期の条件を見直す

胚移植の方法や、移植周期の子宮内膜の状態やホルモン補充の方法、胚移植のタイミングなども確認すべき項目です。

 

ただし、検査を増やせば必ず原因が見つかるわけではありません。追加検査についても、結果が治療方針の変更につながるかどうかを考慮することが大切です。

 

 

当院が大切にする着床障害への治療の考え方

胚移植を繰り返しても妊娠に至らないとき、「次は何か新しい治療を追加したい」と考えるのは自然なことです。

しかし、追加治療の種類を増やすことが、必ずしも妊娠への近道になるとは限りません。

着床障害に対する治療では、まず過去の採卵・培養・胚移植の結果を振り返り、どの段階に課題がある可能性があるのかを整理することが重要です。

例えば、胚の発育に課題がある場合と、良好な胚を複数回移植しても妊娠に至らない場合では、優先して検討すべき項目が異なります。

そのうえで、追加治療については、次の3つの視点から考えることが大切です。

① 科学的根拠がどこまで示されているか

妊娠率や出生率の改善が確認されているのか、それとも効果が研究段階にあるのかを区別します。

② ご自身の治療経過に合っているか

ほかの患者さまで効果が報告されていても、ご自身に同じ効果が期待できるとは限りません。

③ 身体的・経済的な負担に見合うか

追加の処置や通院、費用が発生する場合には、その負担も含めて判断する必要があります。

 

SEET法やスクラッチ法も、こうした視点から選択をする前に検討すべき治療の一つです。

 

当院では、患者さまのこれまでの治療経過や検査結果を踏まえ、必要な評価と治療の選択肢について丁寧に説明し、納得して次の胚移植に臨めることを大切にしています。

 

▶︎ 関連記事:受精卵のグレードとは?わかりやすい解説

 

当院の治療方針とサポート体制

ファティリティクリニック東京では、高度な医療と、心に寄り添うサポート体制の両立を目指しています。

① 医療の安全管理 ISO9001の認証を取得し、医療安全管理室を設置。すべての採卵・培養プロセスにおいて厳格な品質管理を徹底し、貴重な卵子1粒ひとつを安全・確実に扱う体制を整えています。

② 高い医療水準の維持 JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の監査合格施設として、専門の医師と胚培養士が精密な治療体制を確立。過去の採卵データやホルモン値を詳細に分析し、型通りではない個別の卵巣刺激プロトコルをご提案します。難度の高い症例であっても、培養室の高度な環境と連携して胚発育の最大化を図ります。

③ 心に寄り添う医療の実践 医師・看護師・胚培養士・心理カウンセラーが連携し、検査や治療の内容を一つひとつ丁寧にご説明します。不妊治療が「つらいもの」ではなく、「希望に向かう選択」として感じられるようサポートします。

 

▶︎ 当院の特徴について詳しくはこちら

 

まとめ

今回は、SEET法やスクラッチ法の仕組みと有効性、そして着床障害に対する治療の考え方について解説しました。

SEET法とスクラッチ法は、いずれも子宮内膜の環境に働きかけることを目的として考案された方法ですが、現時点では妊娠率や出生率を確実に改善する効果が確立されているわけではありません。

また、胚移植が繰り返し不成功となる背景には、胚の状態や子宮内の環境など、さまざまな要因が関係している可能性があります。

大切なのは、追加治療を行うこと自体を目的にするのではなく、これまでの治療結果を丁寧に振り返り、ご自身に必要な検査や治療を見極めることです。

ファティリティクリニック東京では、患者さま一人ひとりの治療経過や検査結果を踏まえ、科学的根拠と安全性を考慮しながら、次の治療方針を一緒に考えてまいります。

 

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