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甲状腺機能の異常は妊娠に影響する?不妊との関係や検査・治療について解説
院長 小田原圭2026年10月14日

 

はじめに

不妊治療の検査で、「甲状腺の数値も調べておきましょう」と言われることがあります。

甲状腺は首の前側にある小さな臓器です。一見すると妊娠とはあまり関係がなさそうですが、甲状腺から分泌されるホルモンは全身の代謝を調節しており、女性の月経や排卵とも関わっています。

実際、これまで甲状腺の病気を指摘されたことがなく、特に気になる症状もなかった方が、妊活や不妊治療をきっかけに甲状腺機能の異常を指摘されることもあります。

ただし、検査でTSHなどの数値が基準から外れていたからといって、それだけで「妊娠しにくい」と決まるわけではありません。

今回は、甲状腺機能と妊娠にはどのような関係があるのか、不妊治療ではどのような検査を行い、異常が見つかった場合にはどう対応していくのかを順番に見ていきます。

 

【目次】

・甲状腺機能と妊娠にはどんな関係がある?

・甲状腺機能の異常が排卵や妊娠に与える影響

・妊活中に知っておきたい代表的な甲状腺疾患

・不妊検査では甲状腺の何を調べる?

・甲状腺機能に異常が見つかったら妊活はどうする?

・当院の治療方針とサポート体制

・まとめ

 

甲状腺機能と妊娠にはどんな関係がある?

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体温や心拍、エネルギー代謝など、私たちの身体のさまざまな働きを調節しています。

そして、女性の生殖機能もその一つです。

甲状腺ホルモンのバランスが大きく崩れると、月経周期が乱れたり、排卵に影響したりすることがあります。また、妊娠が成立した後も甲状腺ホルモンは母体だけでなく、胎児の発育にも関係します。

ここで覚えておきたいのが「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」です。

TSHは甲状腺そのものから出ているホルモンではなく、脳の下垂体から分泌され、甲状腺に「ホルモンを作ってください」と指示を出す役割を担っています。

そのため、甲状腺がきちんと働いているかを調べるときには、甲状腺ホルモンだけではなくTSHも確認します。

不妊治療の血液検査でTSHを測定することがあるのは、こうした理由からです。

 

甲状腺機能の異常が排卵や妊娠に与える影響

甲状腺機能の異常には、大きく分けると「甲状腺ホルモンが不足している状態」と「過剰になっている状態」があります。

 

甲状腺ホルモンが不足している場合

甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」では、月経周期が乱れたり、排卵が起こりにくくなったりすることがあります。

甲状腺機能が低下すると、身体は甲状腺を働かせようとしてTSHを増やします。その過程でプロラクチンというホルモンが上昇することがあり、プロラクチンが高くなると排卵が抑えられる場合があります。

また、明らかな甲状腺機能低下症が十分に管理されていない状態では、妊娠後の流産や妊娠合併症などとの関連も知られています。

 

甲状腺ホルモンが過剰な場合

反対に、甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症」でも、月経周期に影響が出ることがあります。

妊娠中に甲状腺機能が過剰な状態が続けば、母体や胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠前から適切に管理しておく必要があります。

とはいえ、「TSHが高かったから、それが不妊の原因」と単純に結びつけることはできません。

 

妊娠には、年齢や排卵、卵管、子宮の状態、男性側の因子など多くの要素が関わります。甲状腺機能もその中の一つとして捉え、ほかの検査結果と合わせて考えていきます。

 

妊活中に知っておきたい代表的な甲状腺疾患

妊娠を希望する女性に比較的よくみられる甲状腺疾患として、「橋本病」と「バセドウ病」があります。

 

橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病は、免疫機能の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患です。

「橋本病=甲状腺ホルモンが少ない」と思われることもありますが、必ずしもそうではありません。橋本病があっても甲状腺機能が正常に保たれている方もいます。

一方、甲状腺の働きが徐々に低下し、甲状腺機能低下症となるケースもあります。

妊娠を希望している場合には、病名だけではなく、現在の甲状腺機能がどのような状態なのかを確認することが重要です。

 

バセドウ病

バセドウ病も自己免疫疾患ですが、こちらは甲状腺が過剰に刺激され、甲状腺ホルモンが多く作られる病気です。

動悸や発汗、手の震え、体重減少などが代表的な症状ですが、現れ方には個人差があります。

すでにバセドウ病の治療を受けている方が妊娠を希望する場合には、甲状腺機能だけでなく、現在使用している薬なども含めて妊娠前に主治医へ相談しておくと安心です。

 

不妊検査では甲状腺の何を調べる?

甲状腺機能は、採血によって調べることができます。

不妊治療でよく確認されるのが、TSH(甲状腺刺激ホルモン)とFT4(遊離サイロキシン)です。

TSHは甲状腺にホルモンの分泌を促す役割を持ち、FT4は実際に血液中を循環している甲状腺ホルモンの一つです。この2つを組み合わせることで、甲状腺がどのような状態にあるのかを評価します。

必要に応じて、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体といった甲状腺自己抗体を調べることもあります。

ここで少し注意したいのが「基準値」の見方です。

健康診断などで使用される一般的な基準範囲と、妊娠を希望している方や妊娠中の方を診療するときの考え方が、必ずしも完全に同じとは限りません。また、TSHがわずかに高い場合に治療が必要かどうかについても、FT4の値や自己抗体の有無、妊娠の状況などを踏まえて判断します。

検査結果の数字だけを検索して、「この数値だから妊娠できないのでは」と心配する必要はありません。

数値が何を意味しているのかを、ご自身の状況に照らして確認することが大切です。

 

 

甲状腺機能に異常が見つかったら妊活はどうする?

甲状腺機能の異常を指摘されると、「不妊治療を中断しなければいけないの?」と心配になる方もいらっしゃいます。実際には、異常の種類や程度によって対応は異なります。

 

甲状腺機能低下症で治療が必要な場合には、甲状腺ホルモンを補う薬を使用し、適切な状態へ調整していきます。

 

甲状腺機能亢進症についても、原因や程度を確認したうえで治療を行います。特に妊娠を希望している場合には、妊娠中の使用を考慮した薬剤選択が必要になることもあるため、甲状腺を診療する医師と相談しながら進めることが重要です。

 

そして、甲状腺の管理は「妊娠するまで」で終わりではありません。

妊娠すると身体のホルモン環境が大きく変わり、甲状腺ホルモンの必要量が変化することがあります。妊娠成立後も必要に応じて採血を行い、その時々の状態に合わせて治療内容を調整していきます。

 

甲状腺機能に異常が見つかった場合に大切なのは、妊活を必要以上に悲観することではなく、妊娠前から適切に状態を把握し、必要な管理を続けていくことです。

 

当院の治療方針とサポート体制

ファティリティクリニック東京では、高度な医療と、心に寄り添うサポート体制の両立を目指しています。

① 医療の安全管理 ISO9001の認証を取得し、医療安全管理室を設置。甲状腺機能のように不妊・流産に直結する合併症を見逃さないよう、初診時のスクリーニング検査を徹底し、一人ひとりのデータを厳密に一元管理しています。

② 高い医療水準の維持 JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の監査合格施設として、専門スタッフが精密な治療体制を確立。甲状腺の専門医療機関と強力な連携体制(密なネットワーク)を構築しており、妊娠前後で変化しやすいホルモン値を常に最適な状態に保てるよう、並行して高度な治療をサポートします。

③ 心に寄り添う医療の実践 「甲状腺の病気と言われて不安」「薬を飲みながら妊活して大丈夫?」という疑問や不安は尽きないものです。当院では医師・看護師だけでなく、心理カウンセラーも在籍しており、合併症を抱えながらの治療に対するストレスや悩みについても、いつでも相談できる環境を整えています。

 

▶︎ 当院の特徴について詳しくはこちら

 

まとめ

今回は、甲状腺機能の異常が妊娠に与える影響や、不妊との関係、検査・治療について解説しました。

甲状腺は妊娠とは直接関係がないように見える臓器ですが、甲状腺ホルモンは月経や排卵、そして妊娠後の母体や胎児にも関わっています。そのため、妊活中に甲状腺機能を確認することには意味があります。

ただ、検査結果の数字だけを見て一喜一憂する必要はありません。TSHが基準範囲から外れていた場合でも、その程度やFT4の値、自己抗体の有無などによって意味合いは変わります。

異常が見つかったときには必要に応じて甲状腺の治療を行い、適切に管理しながら妊娠を目指すことができます。

ファティリティクリニック東京では、不妊検査の一つひとつの数値だけを見るのではなく、患者さまの身体の状態やこれまでの経過を含めて治療方針を検討しています。検査結果について分からないことや不安なことがあれば、診察の際にご相談ください。

 

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