Fertility Clinic Tokyo
当院の不妊治療

当院の不妊治療

その他の一般不妊治療

黄体補充療法

排卵後、卵巣からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、胚(受精卵)が子宮内で発育する(これを着床といいます)ことを助けます。この黄体ホルモンの分泌が低いと着床が障害されます。その改善のために黄体補充療法を行います。

黄体補充療法には、黄体ホルモン(プロゲステロン:P)を使用する方法と、黄体ホルモン分泌を刺激するホルモンである LH と同じ作用をもつ HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を使用する方法があります。

  製剤名 使用法
黄体ホルモン
(プロゲステロン)
デュファストン 1日3錠 を排卵後、
2週間連日内服
ルテウム、プロゲストン 2週間連日筋肉注射
ルテウムデポー、
プロゲストンデポーS
4〜7日毎に筋肉注射
HCG HCG、プロファシー、
プレグニールなど
排卵後 3〜5日毎に3000〜5000単位を筋肉注射投与します。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は卵巣の表面が硬くなり、卵子が排卵しにくくなる病気です。
PCOSはクロミフェン療法では排卵が起こらないことが多い一方、HMGを用いて排卵を誘発すると多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすい病気です。

PCOSの治療には薬物療法と手術療法があります。

手術療法

腹腔鏡を用いて卵巣の表面の一部をレーザーまたは電気メスで焼却します。手術後に薬を用いず、自然に排卵する率は 約20% とやや低率ですがクロミフェン、HMG を併用した場合の排卵効果は手術前より高くなるとともに、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群の発生率は低くなります。ただし手術効果は半年-1年しか持続しません。

薬物療法

クロミフェン療法、
クロミフェン+プレドニン療法

PCOSでは副腎という組織から分泌される男性ホルモンが増加して、症状を悪化させることがあり、これを抑えるために副腎皮質ステロイドホルモンであるプレドニンを少量使用することで卵胞成熟が促進する場合があります。

クロミフェン+HMG療法、
HMG+HCG療法

クロミフェン内服で排卵しない場合には、HMGあるいは FSH を用います。多嚢胞性卵巣にHMG療法を用いた場合多数卵胞が同時に発育するため OHSSに対する注意が必要です。

PCOSに対する
メトフォルミンの応用

PCOSの病因は卵巣内のアンドロゲン過剰による卵胞の閉鎖やLHの上昇といわれます。インスリンは卵巣内のアンドロゲン産生を促進するため、糖尿病の治療薬であるメトフォルミンが使われることがあります。1日2〜4錠を連日服用することにより、卵の質が向上する場合があります。

子宮内膜症の治療

子宮内膜症が不妊を起こす機序は複雑であり、その治療法も不妊期間、年齢、進行度を考慮して決定する必要があります。子宮内膜症の一般的治療には手術療法と薬物療法があります。手術療法には開腹手術と腹腔鏡手術がありますが現在では可能な限り開腹手術を避け、腹腔鏡手術を行う傾向にあります。腹腔鏡手術の長所としては術後癒着が少ないこと、入院期間が短いこと、術後の痛みが少ないこと、お腹に傷が付かないことなどが挙げられます。子宮内膜症の薬物療法に用いられる薬剤はすべて月経を止める作用を持ちます。つまり月経を抑えることにより子宮内膜症の進行を抑えるのです。
治療薬には(1)偽妊娠療法・(2)GnRHアナログ療法・(3)ダナゾール療法 があります。いずれも 4-6ヶ月治療を続けます。
薬物療法には妊娠率を上げる効果はなく、あくまで自覚症状の改善を目的としておこないます。

偽妊娠治療

経口避妊薬(ピル)を使って月経を止める方法ですが、(2)(3)の治療薬が市販される以前に広く使われた方法で現在では治療と同時に避妊を希望する場合など限局的に使われます。

GnRH アナログ療法

視床下部から分泌される卵巣刺激ホルモンを抑えることにより卵巣ホルモンを低下させ、内膜症の進展を抑えるもので3種類の薬剤が使われます。スプレキュアとナサニールは点鼻薬で1日2-3回鼻に噴霧します。ナサニールの方が濃度が高いので1回量が少なくてすみますが、人によっては喉の刺激が強いと感じることがあるようです。リュープリンは月1回の注射で2種類の異なる濃度のものが市販されています。GnRHアナログ療法は投与して2週間くらい経たないと卵巣の機能 (排卵)を抑えません。そのため治療開始直後は出血をきたしたり、卵巣が一時的に腫大することがあります。 この現象は投薬を続けるにしたがい消失します。GnRH アナログによるホルモン抑制の度合いには個人差があります。そのため同じ使用量でも月経を抑えるのに充分なホルモン抑制が起きずに不正出血が起こる場合や逆に抑制が強すぎるために冷や汗、のぼせ、手足のしびれなどの更年期様症状が起こる場合があります。ただしこれらの副作用については投与量を加減したりエストロゲン内服薬を併用することにより、防止することが可能です。また薬を中止すれば副作用もなくなります。

ダナゾール

GnRHアナログと同様に卵巣からのホルモン分泌を抑えると同時に子宮内膜症組織に作用して病巣を直接治療する作用を有します。ダナゾールは男性ホルモン様作用をもつために服用中に体重増加、男性化、肝機能異常などを起こすことがあります。最近低容量ダナゾール療法として通常の1/4-1/3の量でダナゾールを長期服用する方法が行われています。
この方法は副作用が少なく、自覚症状の改善は顕著であることから注目されています。これらの内服薬を用いることにより、生理痛などの症状は改善します。しかしながら月経が回復すると再び症状が悪化することも少なくありません。子宮内膜症は月経があるうちは完治が難しい慢性疾患と考え、病気とうまくつきあっていくつもりで、治療を続けることが必要です。
また、手術療法、薬物療法をおこなった場合、それが有効であれば、1年以内に妊娠することが殆どです。この間に妊娠しない場合は体外受精など、一歩進んだ治療が必要となります。

子宮筋腫:子宮腺筋症の治療

子宮筋腫がある場合に筋腫のこぶをとる手術(筋腫核出術)をするべきかどうかはとても難しい問題です。子宮筋腫のすべてが不妊の原因になるわけではありません。
不妊の原因となる筋腫は子宮内腔に飛び出していたり、内腔の変形を認める場合で、このような筋腫があると子宮内膜の状態が悪くなり、胚(受精卵)が子宮の中で発育できなくなります。このような異常を調べるために MRI という体の断層撮影や子宮鏡などの検査が必要です。これらの検査で異常が認められる場合は手術が必要です。手術には開腹と腹腔鏡(LAM)があります。可能であれば腹腔鏡での手術が望ましいと考えますが、筋腫の位置や大きさによっては開腹が必要な場合もあります。
反対に、大きくても子宮の外方に発育する筋腫であれば必ずしも手術が必要ということではありません。ただし大きな筋腫ではたとえ外側にあっても子宮の血行障害を引き起こしたり、妊娠した場合に流早産、腹痛の原因になることがあるのであらかじめ手術を行った方が良いかもしれません。
ただし手術後に癒着を起こすこともありますので手術が必要かどうかについては慎重に検討する必要があります。子宮腺筋症の場合は子宮全体が腫大するため手術をしてもあまり効果は無く、子宮内膜症と同様な薬物治療が行われます。

卵管障害に対する治療

卵管の異常に対し手術を行うべきかどうかは卵管の状態とともに年齢を考慮して決める必要があります。手術をおこなう場合には以下の条件を満たしていることが必要です。

  • 卵管に強い炎症が無いこと

    炎症がある卵管では卵管の輸送機能が障害され、たとえ手術しても卵子を運ぶ機能が回復しないことがあります。

  • つなげたあとに充分な長さの卵管が残ること

    卵管をつなげる手術をした場合、卵管のつぶれている長さがあまりにも長いと、つなげた後の卵管が短くなってしまい、卵子を取り込むことが出来なくなってしまいます。

  • 手術をする部位が卵管の比較的広い部分であること

    卵管は子宮から出た部分が最も狭く、先に行くにしたがい太くなるので、閉塞部分が子宮と卵管の接合部付近だと手術成績は低くなります。
    一方で卵管采部(出口部分)の癒着を剥離する手術や不妊手術(卵管をしばる手術)後に元に戻す手術では良好な成績が得られています。

  • 手術時に年齢があまり高くないこと

    年齢的には手術後の経過観察時間を考慮して33才位までが手術の適応といえます。また、精子の異常など、他の不妊原因がないことが条件です。

FTカテーテルによる卵管の治療法

卵管の閉塞が子宮とのつなぎ目の部分(角部)の場合には、卵管鏡という検査法で卵管にカテーテルを挿入して、卵管を通す方法があります。状態によっては腹腔鏡と同時におこなう必要がある場合もあります。FTカテーテルについてはこの分野における権威である慶応義塾大学病院末岡浩助教授をご紹介しています。

婦人科手術が必要な場合の主なご紹介先について

日赤医療センター 安藤一道先生、宮内彰人先生
帝京大学溝の口病院 西井修先生
日本医科大学付属病院 明楽重夫先生
川崎市立多摩病院 栗林靖先生
山王病院 井上正人先生
慶応義塾大学病院 浅田弘法先生

明らかな不妊原因を認めない場合の治療方法

腹腔鏡など一通りの検査を施行したにもかかわらず不妊症の原因が明らかでない場合、治療はいくつかの方法を組み合わせたものとなります。原因が明らかでないということは必ずしも原因が無いということではなく、外から診断することが難しい異常(たとえば卵管の機能障害、受精障害)が存在しているとも考えられます。

そのために以下のような治療の進め方をします。妊娠するのは6周期以内が殆どですので半年で妊娠しない場合は次の治療に進みます。一般不妊治療を続けた場合、妊娠するまでに1-2年の時間を費やすことがあります。そのため年齢が高い(とくに40歳以上)、不妊期間が長い、あるいは他の病院にてすでに治療を受けているなどの場合は、治療のステップアップを早める必要があります。

これらの治療で妊娠しない場合、あるいは年齢が高い場合には体外受精の適応となります。体外受精については月1回、土曜日に説明会(体外受精学級)を開催しておりますので、治療を検討される場合には1度ご参加下さい。

基礎体温測定、排卵タイミングの検査

クロミフェン療法(+人工授精)
HMG/HCG療法 (+人工授精)
体外受精−胚移植(ART補助生殖医療技術)

人工授精(AIH)について

  1. 精子が不良な場合
  2. フーナーテストが不良な場合
  3. 性交渉が難しい場合
  4. 原因不明不妊

AIHは上記などの場合に行われます。
自然妊娠において、膣で射精された精子のうち、子宮内に到達するのはおよそ1/1000と考えられますので、子宮内に精子を注入することにより卵子に到達する精子を増やすことができます。精液をそのまま注入すると、精液中の雑菌や受精を阻害する因子が一緒に入ってしまうので、AIHの際は精子を洗浄、培養して注入します。精子の調整に約一時間かかりますので、精子をとられてからお待ちいただくことになります。AIHを行う際にはご主人に感染症の採血検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)を受けていただきます。

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