不妊治療を始めるにあたり、いくつかの
検査を行ってその原因を探る事が必要です。
そこで当院における検査にの流れを説明致します。
基礎体温をつけることによって、排卵が正しく行われているかどうか、おおまかな排卵日の推定、あるいは妊娠が成立したかどうかなどがわかります。
1ヶ月でも良いですから基礎体温表をつけてみて下さい。婦人体温計には水銀とデジタルの2種類があります。どちらを用いても結構ですが、水銀の方がきれいなパターンが描出されます。体温をつけることでストレスや苦痛を感じるようであれば、つけなくても結構です。
最初に行う検査について月経周期に沿って説明します。
ただし医師の指示により個々に違いがあります。
1) 月経中(月経1-5日)
2) 排卵前(月経終了後)
3) 排卵時(月経12-14日頃)
4) 黄体期(高温相5-7日頃)
5) 月経の時期に関係なく行う検査
6) 特殊検査
7) 子宮癌検診
LH/FSH/PRL/E2測定
脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、プロラクチン(PRL)、エストロゲン(E2)を測定します。これは卵巣の機能を調べるための血液検査です。
LH-RHテスト/TRHテスト
月経が不順である場合、その原因がどこにあるのかを明らかにする必要があります。
LH-RH テスト・TRHテストはLH-RH又はTRHという注射を行い、注射前、注射後30分、60分に採血をし、それぞれホルモンを測定することにより月経異常が排卵に関わるどの部分の異常によって生じているのかを明らかにする検査です。
検査当日、食事は通常通りお摂り頂いてかまいません。
子宮卵管造影
卵管が詰まっていないかどうかを調べる検査で、必ず行う必要があります。子宮内にシリコン製の柔らかく細いカテーテルを用いて造影剤を注入して子宮の形、卵管の通過性を確認します。この検査は痛いと心配される方もおられますが、痛みの少ない方法で行いますので心配ありません。この検査を排卵前に行う理由は、妊娠している場合にこの検査が妊娠に影響を及ぼす可能性があるからです。検査が排卵日近くあるいは排卵後になる場合は、検査終了まで避妊して下さい。
超音波検査、頚管粘液検査
排卵が近づくと子宮内膜は厚くなり、卵子を包む卵胞は直径約2センチにまで発育します。これらの変化を超音波で確認します。また、排卵の時期には子宮の出口(頚管部)から頚管粘液が分泌され、精子が子宮内に入りやすい環境を作ります。この粘液が少ないと精子が子宮内に到達出来ないので、その分泌について調べます。
フーナーテスト・ミュラークルツロックテスト
精子頚管粘液の適合性を調べる検査です。フーナーテストは排卵の時期、頚管粘液が充分に分泌されている時に性交渉を行い、当日もしくは翌日に来院していただき、頚管粘液中の精子を調べます。ミュラークルツロックテストは頚管粘液と精液を別々に採取し顕微鏡下でその適合性を調べます。
超音波検査、黄体ホルモン検査
排卵後に黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜を厚くして受精卵を育てる環境が作られます。この時期には黄体ホルモン値を測定するとともに超音波検査により子宮内膜が正しく厚くなっているかを調べます。
また、不妊症の原因となる異常のひとつに黄体化未破裂卵胞症候群(lutenized Unruptured Follicle Syndrome;LUF)があります。この異常があると卵子が卵巣内にとどまり、外に飛び出す事が出来ません。この時期に超音波をすることによりLUFの有無についても調べます。
抗精子抗体
精子が体内に入る事により精子に対する抗体を作ってしまうことがあります。この抗体が強いと、精子が体内に入った途端に動かなくなってしまいます。これを免疫性不妊症といいます。この抗体は血液検査によって測定することが出来ます。この検査は健康保険が適応されず自費(税抜:8,000円)となります。
CA125の検査(但し月経中以外の時期)
CA125は子宮内膜症のときに上昇する物質で、これを測定することにより子宮内膜症の有無を推定する事が出来ます。CA125の測定は血液検査で行いますが、月経中は数値が本来より高めに出るため、月経時を避けて検査を行います。また、CA125はすべての子宮内膜症で上昇するわけではなく、軽度の子宮内膜症の場合には正常値であることもあります。そのため子宮内膜症の診断は超音波検査や腹腔鏡など、他の検査の結果と総合して行う必要があります。
AMH(Anti-mullerian Hormone:抗ミュラー管ホルモン)
AMH(Anti-mullerian Hormone:抗ミュラー管ホルモン)とは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備能を知る指標になると考えられています。
女性の卵巣の中には、生まれつきたくさんの原始卵胞があり、初経の頃より原始卵胞が活発化し、発育卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→熟成卵胞と成熟し、約190日かけて排卵します。
AMHは前胞状卵胞から分泌され、その測定値と発育卵胞の数は相関します。従って、AMH濃度を測定することによって、残存する卵胞の数を測定し、卵巣予備能がどれくらいか推定することができます。卵胞の成熟を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)も卵巣予備機能の指標となるホルモンです。卵巣機能が低下すると上昇することが分かっていますが、FSHは月経周期によって大きく変動するため、FSHの値から卵巣予備能を正確に予測することは困難です。AMHの測定は、最も早く正確に卵巣予備能の低下を感知できる検査と考えられます。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ではAMH は高値を示すことがあります。
発育卵胞の数は25歳~30歳をピークに年齢とともに減少してゆきます。同時に血液中のAMH濃度も減少し、 AMH低濃度では自然排卵が起こりにくいだけでなく、不妊治療の際に排卵誘発に反応しないことが多くなり、タイミング療法や人工授精、体外受精を予定していても、卵胞が発育しないため治療を断念せざるを得ないという事態が懸念されます。そのような事態を避けるためには卵巣予備能を把握しておくことが重要です。
また、卵巣内の発育卵胞数を知ることによって適切な排卵誘発法を選択することができるため、逆に卵胞が育ちすぎて卵巣が腫れてしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを下げることができ、効率良く治療を進めることができます。この検査は健康保険が適応されず自費(税抜:7,500円)となります。
初診時感染症スクリーニング検査
当院では妊娠中に感染すると母子に問題を起こす可能性のある感染症について、初診時にスクリーニング検査を行っています。
初診時感染症スクリーニング検査(自費:10,000 税抜)
甲状腺機能検査を含む場合(自費:14,500 税抜)
* 甲状腺機能に関する検査の必要の有無に関しましては医師の判断となりますので医師にお尋ね下さい。